冷酷
素晴らしき邦題の世界 シリーズ vol.16
Nick Lowe / Cruel To Be Kind
英米ともにチャート12位を記録した
ニックロウ1979年のヒットシングルであり、
DJの間で大定番として重宝されている曲。
この曲は元々ニックロウのバンド、ブリンズリーシュウォーツで演った曲をもう1つの自身のバンド、ロックパイルをバックにソロ名義で(ややこしいが)再演したもので、
最初は別のシングルのB面に収録されている。
コレはみんなが知っている "Cruel to Be Kind" より
テンポが速く曲調も違うので、
いま聴いたら「誰か他の人のカバー?」
って思う人もいるかもしれない。
今回紹介する1979年版アレンジが大ヒットしたヴァージョン。
僕は、このニックロウやコステロ、イアンデューリー等の
英国パブロックが好きなのだが、彼らのシングルがアメリカでヒットするのは極めて珍しい。
当時はパブロックなんて知らなかったので、
あくまで普通の洋楽ヒットとして認識していた。
そんなこの曲がこれほどクラブ界隈でお馴染みになったのはいつからだったろう?
調べてみたら、
ハッキリと記録として残っているのは
須永辰緒さんのミックステープ
Side Bに収録された時だろうか。
以前紹介した大貫憲章さんの本『DJ ALLTIME CLASSICS 200』にも掲載されていたからロンドンナイト周辺でもプレイされていたのだろうが、
誰か特定のDJによるクラシックという感じでは無かったと思う。
それが、辰緒さんのテープに収録されてから
あっという間に地方のDJにも波及していった。
レコード屋をやってるとよくあるのだが、
若いお客さんが唐突に「ニックロウありますか?」
って探しにきたりして、
こちらとしてはそういうテープの存在を知らなければ、
「なんで急にニックロウとか言い出した?」
って驚かされたり。
確かにキャッチーな曲調、テンポ、頭の「タンタタタンッ」ってドラムの入り方、サビの高揚感、間奏のギターの気持ち良さ、どれを取ってもクラブヒットの要素満載。
ただ、やはりこの曲の収録されたアルバムと輸入盤、
特にUS盤シングル(大貫さんの本にもジャケなしUS盤が載ってた)や
ジャケあり英国盤はよく見つかるけど、
国内盤アルバムの放題は『いかした愛の放浪者』
この国内盤7インチはなかなか見つからない。
アルバムと同じデザインに『恋するふたり』の邦題。
曲に合ってる感じがするし、UK盤7インチより断然好きだ。
ただ、邦題がなぜこんな感じになったのかは謎だ。
ビートルズにも『恋する二人』ってあるけど意識したとは思えないし。
" Cruel to Be Kind"
って訳したら「ツンデレ」みたいな意味になるらしい。
ニックロウの歌詞も含めてキャラクターとか職人肌な独特の面白さは僕らが言葉で表現するのは難しい。
邦題を考えるのも一回捻って諦めた、みたいな感じか。