輪郭
素晴らしき邦題の世界 vol.55
Bobby Caldwell / What You Won't Do for Love
日本でも人気の高いボビーコールドウェルのヒットシングル、1978年。
全米チャート9位とキャリア最大のヒットとなっている。
ボズスキャッグスらと共に所謂「AOR」系と称されるジャンルの代表格とされている。
このAORという括りは日本独自のものらしく、
Adult Oriented Rock
要は「アダルト」「大人向け」ロックってことになるらしい。
いま日本でよくメディアに取り上げられている
「シティポップ」なんかに感覚は近いと思うが、
つまりはレコード屋でどこのコーナーに入れるか迷うサウンドだったんだろう。
「ロック」と言えばロックだし、
「ポップス」と言えばポップスだし。
何をもって「アダルト」なのか?って疑問ではあるけど、なんとなく雰囲気で納得はできる。
僕も若い頃は自分が聴くような音楽だとは思っていなかった。
90年代に一部メディアで『AIR GROOVE』なんて新しい価値観で再評価されたり、
メロウ系な選曲も一つのスタイルとして認識されるようになって、AORにもDJで使える曲があるって知ってから、
この辺りのレコードにも自然と手が伸びるようになっていったけど、
曲は気に入ってもアーティスト自体への思い入れみたいなのは皆無だった。
なぜ思い入れがないかと言えば、まずどんな人が歌っているのかも知らなかった点がある。
僕が当初この曲を手に入れたレコードは、
こんなクリアハート型シェイプド仕様7インチだった。
(音が鳴る溝の部分までが7インチで実際は10インチサイズのジャケット)
なので、どんなアーティストかなんて気にも留めなかった。
アルバムのジャケットデザインはボビーコールドウェルらしき人物がシルエットで描かれている。
そこで、やっと今回紹介する日本盤7インチの出番なのだが僕は全く存在を知らなかったので、
エーッ!コレ、あの曲のシングル?と驚いた。
アメリカでは原盤をリリースしたマイアミディスコサウンドの雄TKレコードのマーケティング戦略的な意味合いもあり、敢えて本人の画像ではなくシルエットデザインを採用していたらしいのだが、
日本では関係ないとばかりに、こんな感じで
シングルにドーンと本人が登場してしまった。
『風のシルエット』
アルバムの印象と繋がるような邦題にするために
原題とは全く関係のない「シルエット」なんてワードを用いたのだろうが、このジャケットではまるで意味がない。
結果、松田聖子の曲にありそうなタイトルになった。
(松田聖子のデビューより全然前ではあるけど)
こういう推測まで含めて日本盤シングルは楽しめるのだ。